これは元本の内、最適複利収益率を得るにはどれ位の投下資金比率にする
のが良いかを算出するものです。
FXトレードでも応用できますが、文字通りに従うことは危険です。
ケリー基準についてやや詳しく説明し、その制限的な利用法を紹介します。
複利と単利
投資の本を読むと、複利と単利の違いの説明があります。
複利が有利なことは、簡単な説明でできます。
同じ元本で単年度の収益率が同じなら、期間が長くなると差が出ます。
例えば、100万円の元本で単年1年の収益率を10%とすると、
単利の収益は、ずうっと同じ元本で収益の部分だけを合計しますので、
100万円×10%×10年=100万円
これに対し複利の収益は、収益を常に再投資(元本組入れ)しますから、
100万円×(1+10%)10ー100万円=159万円
となります。複利の方が約59万円多くなります。
このように計算結果は明々白々です。しかし現実的ではありません。
例えば、10年連続で同じ10%の収益率とは非現実的です。
しかも、この収益率は1年間に1回の取引で必ず10%儲けるようなイメージ。
現実は1年間に何回も、何十回も取引し、勝ったり負けたりです。
そこで、個々の1回1回の取引を基準にした考え方が必要になるわけです。
それがアメリカ人のケリーという人が考えたケリー・クライテリア(基準)です。
これはギャンブルを使って導き出された考えです。
FXなどに応用をするため読み替えが必要ですが...
ケリー・クライテリア(基準)
ケリーはギャンブルの例を使って、最も儲かる賭け方を考えました。
その際、勝率とオッズ(掛金1に対する儲け分)を変数にします。
求める答えは、最高の複利収益率をもたらす投下資金比率(対元本)です。
ケリー基準の公式は次のようになります。
勝率をp、オッズをbにして、資金比率をfを出します。
f=(オッズ×勝率ー(1-勝率))÷オッズ
=(b×pー(1-p))÷b
となると言います。まさになんのこっちゃですね。
これをFXなどのトレードでも通用するために少し読み替えます。
オッズを、損が1で利益がbのリスク・リワード比率(RR比率)とします。
そうすると先ほどのfは、
f=p-(1-p)÷b
=勝率ー負け率÷RR比率
となり上の式と同じです(1項目をbで割っているだけです)。
例題として、勝率pを0.6、RR比率を1.2とした場合の資金比率fは
f=0.6ー0.4/1.2=26.7%
これより、元本の4分の1程度を賭けるのが複利収益率を最大にする、
という計算結果になります。
プラスの複利収益率を得るには、勝率>(負け率÷RR比率)が必要です。
この式より、当たり前のことですが言えることは、
・掛金比率を大きくするには勝率やRR比率が大きくなけれならない
・勝率及びRR比率の組合せによりマイナスつまり賭けない方が良い場合あり
このようにアカデミックには理路整然ですが、実際の応用は難しいです。
何故なら、多くの人は自分の勝率やRR比率を一定だと勘違いしているため。
勝率やRR比率は一定ではありません。
ウォーレン・バフェットやピーター・リンチはケリー基準を使っていたと、
言われますが、恐らく変動する勝率やRR比率を上手く使えたのでしょう。
ケリー基準の利用の仕方例
ケリー基準の使いこなしは難しいです。
ウォーレン・バフェットのような成功者がいる反面、多くの失敗者がいます。
失敗の最大の原因は、変動する勝率とRR比率を上手く捉えられなかったため。
ケリー基準を使って勝率とRR比率別の掛金比率を計算してみます。
◇資金比率(RR比率を縦に、勝率を横にして計算)
35% | 40% | 45% | 50% | 55% | 60% | |
0.8 | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% | 10% |
0.9 | 0% | 0% | 0% | 0% | 5% | 16% |
1.0 | 0% | 0% | 0% | 0% | 10% | 20% |
1.1 | 0% | 0% | 0% | 5% | 14% | 24% |
1.2 | 0% | 0% | 0% | 8% | 18% | 27% |
1.3 | 0% | 0% | 3% | 12% | 20% | 29% |
1.4 | 0% | 0% | 6% | 14% | 23% | 31% |
1.5 | 0% | 0% | 8% | 17% | 25% | 33% |
0%は取引しないのが良いと言う意味です。
この表からも分かるように、勝率の変化は資金比率に大きな影響を与えます。
実際、特に初心者は負けると熱くなって負け続けると言います。
勝率35%まで落ちた時、RR比率が1.86以上ないとドンドン元本減ります。
結局は、ますます難しい局面になり、口座を溶かす事態にもなるのです。
ハーフ・ケリーという考え方
自分の勝率やRR比率が一定だと考え、資金比率を計算し、
その通りのリスクを取ったりすると口座を溶かすことが良くあります。
このため、ケリー基準をそのまま使うのは良くないという考えが出ました。
ケリー基準から算出される数値の半分が良いのではないかとするのです。
これは勝率が突然落ちた時の部分的な対応になります。
また、取引しない方が良いエリアに近い勝率とRR比率の組合せの場合、
取引を控えた方が良さそうです。
商材を販売するトレーダーの中には、3度連続負けたら休むという人もいます。
この考え方はケリー基準にも沿ったものです。簡単で守りやすいかもしれません。
また、別のやり方ですが、許容損失額からロットを算出する方法もあります。
この方法は勝率悪化は考えていません。ケリー基準と合わせて使うのが良いです。
つまり、勝率の低下などの場合、取引しないなどの対応が必要です。